ついに発売されました、絵本「化鳥」。
僕にとって2冊目の泉鏡花作品の絵本化です。
前作「龍潭譚」は純粋なる模索の末、自費出版にて世に出した
(まだ出し切ってないんですが^ ^;)本でしたが、
今回は国書刊行会さんという知る人ぞ知る出版社から刊行されました。
この夏は化鳥制作で終始した、と以前も書きましたが、
いちはやく見本誌が届いたとき、その全ての苦労が吹き飛びました。
その装幀の美しさ。
コーティングされた白い紙は不思議にマットな艶をたたえている。
光の具合で浮かび上がるエンボスで刻まれた鳥の羽の陰影。
その上には銀で刷られた書家・上田普氏によるタイトル文字。
帯はトレーシングペーパーのような紙に銀の文字がさらっと。
それは「新しい鏡花本」でした。
はじまりはやはり繪草子「龍潭譚」でした。
昨年金沢泉鏡花記念館にて開催された「龍潭譚原画展」が予想以上に好評で、
金沢市の方々にも高く評価していただきました。
昨年10月に金沢主計町のお茶屋カフェ土家においておこなわれた
「龍潭譚トーク&ライブイベント」の翌朝、
金沢市の方から正式に「化鳥」の絵本化の依頼を受けたのです。
なぜ「化鳥」だったかというと、
金沢が舞台(だと思われる)の童話である。
幼い男の子の主人公が口語で語る文体なので、鏡花作品の中では解りやすい。
という2点だったと思います。
金沢市さんとしては、地域が誇る文豪泉鏡花のことを、
子ども達や若い人たちに知ってもらえる絵本を作りたいという意向でした。
名前は知っているが、読める作品は少ない(と思われている鏡花作品)
なので、絵本からはじめてもらおう。
しかも金沢が舞台なら、愛着も持ってもらえる。
僕たちもそのそのお手伝いができるならと、よろこんでお引き受けしました。
それがほぼ1年前。
そして泉鏡花記念館学芸員の穴倉玉日氏が中心となり、
プロジェクトチームが結成されました。
企画編集は、泉鏡花記念館穴倉氏。
監修に、文芸評論家にして幻想文学アンソロジスト東雅夫氏。
出版社は国書刊行会(担当編集者は化鳥をこよなく愛する編集長I氏)。
挿絵は私「中学1年のときから鏡花ファン」中川学。
そして装幀は、龍潭譚の本作りで鏡花ファンの度肝を抜いたデザイナー泉屋宏樹氏。
もうこれ以上はない、という布陣。
全員が一同に介して会議をした、ということは実は一度もないのですが、
それでもみんなの気持ちは一つでした。
「新しい鏡花本をつくろう」と。
「鏡花本」とはそのまんま泉鏡花の単行本のことなのですが、
現存している鏡花本はどれも美しい。
装画、タイトル文字、本の素材、文字組など、隅々まで美意識がゆきとどいていて、
持ってるだけで幸せ(持ってませんが^^; 今やとても高価なので…)な本なのです。
特に、小村雪袋さん装幀の本はもう、今見てもためいきモノ。
そんな「鏡花本」を作りたい。
そんな共通の思いを胸にプロジェクトは動き出しました。
それから1年。
ようやく届いた絵本「化鳥」は、見事に「新しい鏡花本」でした。
「新しい」は単に新品、ということでなく、「新感覚の」という意味です。
伝統を引き継ぎながら、ちゃんと新しい感覚で解釈した鏡花本になっております。
装幀の泉屋くん、見事な手際!
手に取ってみてほしいですが、彼の美意識が行き渡っております。
と書いてきて、絵本「化鳥」について語っても語り尽くせない自分に気付きました。
しばらくブログで書いていこうと思いますので、おつきあいの程を(^^)