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絵本「化鳥」〜鏡花作品を絵本にする〜

 

さて、僕に課せられた課題は、
鏡花作品を絵本にする、ということでした。
しかも『子どもや若いお母さんたちに読んでもらえるような』という注意つき。
このことは、作っていくうちにメンバーの間で
「鏡花本をつくる」=「大人の観賞に耐えうる本をつくる」と変化していき、
こどもむけ絵本は意識しなくてもいいよ、
というありがたいお言葉もいただいたのですが、
僕はやっぱりそこにこだわりたいと思いました。
「龍潭譚」も絵本でしたが、あくまで大人の読者を想定していました。
(なにせハダカ連発ですからネ^ ^;)
それに対して「化鳥」は母と子がモロにテーマのお話ですし、
題材的にもファンタジーです(鏡花の幻想譚はこの作品からはじまりました。
ちなみに怪奇モノのはじまりは「龍潭譚」とのことです。
期せずして、僕はその重要な2作品を絵本化してしまったことになります^ ^;)。
何より金沢のこどもたちに鏡花のことを知ってもらうために作る、
ということに、とても意義を感じました。
円谷英二がウルトラマンを撮ったときに、
「こどもむけだからこそ、ちゃんと作らねばならない」みたいなことを
言ったと昔何かで読んだことがありますが、まさにそういうことを目指そうと。
これは大正時代に文豪たちがこどもたちのために
ちゃんとした童話をつくろうとおこした「赤い鳥運動」にも通じます。
それには泉鏡花も参加していたと聞きますし。
「赤い鳥」のこころで望もう!と(共同基金じゃありませんよ)。

しかし、泉鏡花の子ども向け絵本、なるものはこれまで存在したことがなく、
一体、どういう方向性のものを作ればいいのかわからない。
最初僕が読んだ限りでは、「化鳥」のストーリーは
決して前向きなものではありませんでした。
なにせ、お母さんの世間への恨みの呪縛から逃れられない男の子のお話、ですから
そんなものをお母さんと子どもに読ませていいのか?

それに対して、
泉鏡花記念館の穴倉さんの答えは明確でした。
「中川さん、それは違います。物語の一番最後の文章を読んでください。
『母様がいらっしゃるから、母様がいらっしゃったから』と、
過去形になっているでしょう。
この話は、少年がお母さんの呪縛から自由になった後の視点で
描かれているお話なんですよ」
この言葉は目からウロコでした。
おそらく主人公の少年は鏡花自信がモデルです。
鏡花は、生涯母のことをテーマに小説を書いているが、
それは単なるマザコンではなく、文学に昇華されている。
つまり、「化鳥」は、主人公の少年が、この物語の中でおきる事件で、
母の呪縛から一歩踏み出すお話だったのです。
そうか、そうだったのか!

そしてもう一つ、穴倉さんから絵本の方向性に関して
重要なキーワードを提示してもらいました。それは、
「トラウマになるかもしれないけれど、こどものこころに一生のこって、
そこから豊かな感性が生まれてくるような、例えば『星の王子様』のような絵本」
というものでした。
そうして、ちょっとずつ、新しい鏡花絵本の歩むべき方向が見えだしたのでした。
(まだ続くのか、これ…^^;)


  • 2012.11.09 Friday
  • -
  • 19:30

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