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金沢と朱日記

昨日UPした「朱日記と泉鏡花記念館」の記事について、
泉鏡花記念館の学芸員氏より、すかさず
『「朱日記」は”研究者に重要視されていない作品”ではなく
”一般的にあまり知られていない作品”と言った方が正確な表現と言えます。』
とのご指摘をいただきました。

すみません(_ _);;
いいかげんな文章表現でした。

朱日記には『”研究者に重要視されていない作品”ではなく』というご指摘通り、
立派な研究論文があります。
穴倉女史より以前教えていただいたものに
藤澤秀幸氏の「泉鏡花『朱日記』論序説ー<城下を焼きに参るのぢゃ>をめぐってー」という
有名な論文がありまして、朱日記の怪異部分について考察がなされております。
これがとっても面白い。

この論文中で藤澤氏は
「雑所先生が怪異に遭った魔所」と「クライマックスの火事」について
そのモチーフを金沢の歴史と伝説と地域の中に見つけていきます。
ちょっと推理モノのようで、ドキドキしながら読みました。
かいつまんで言うと、
「山の奥」は「黒壁山」で「旧道」は旧鶴来街道、
「魔所」は高尾から地黄煎までの窪、「物見の松」は地黄煎の今は無き見張りの松、
「大川」は犀川、など
詳細な考証の末に実際の場所と結びつけられています。
特にこの鶴来街道ラインにある「高尾の坊主火」伝説との関連の指摘を読むと、
そこにちがいない!と唸ってしまいます。
また火災についても鏡花の生家が焼けた明治の「味噌蔵町焼け」ではなく
江戸時代の「宝暦九年の金沢大火」であろうと指摘されていて、
そこにも古文献や鏡花のころに金沢で上演された芝居の演目などからの考察があって、
納得させられます。

でもね。
僕的にはやっぱり、卯辰山-一本松-浅野川あたりの、
つまりいつもの鏡花ワールド的聖地(であり魔所)がアヤシイように思ってしまうのです。
だって朱日記の学校のモデルは鏡花の通ってた小学校「養成小学校」だろうし
(主人公の美少年宮浜も雑所先生も鏡花自身だと思う)、
そこに通ってる雑所先生のお宅がある町内が丘の上から見えるんだから、
養成小近くの卯辰山くらいの距離感なんじゃないか。
卯辰山には「山王の社」もあるし、
その辺りから望んだ風景が、浅野川の向うにすぐ近くにお城が見えるという、
文中の表記に似てると思うんですよね。
それに、物語の中で妙に象徴的に燃え上がるのは、
お母さんの思い出につながる「一本松(五本松?)」のほうが、らしくないかな。
とまあ、これは全くなんの考証もなく、
いっぺん卯辰山に登ったばっかりの僕の直感のみなので、
なんの信憑性もない、たぶんいつものオモイコミなんですが。

確かに金沢で「魔所」と言えば鏡花自身も同名の小品に書いているように「黒壁」だし、
卯辰山じゃあ、あまりに近過ぎだし、そんな深い山でもない。
けれど、幼い頃になじんだ場所を膨らませて、
物語にしたてあげるのは空想家としてはよくあることのような気がするんですよね。
たぶん、「黒壁」も「地黄煎の今は無き見張りの松」も「いつもの卯辰山」も
「一本松」も「味噌蔵町焼け」も「宝暦の大火」も
若い頃に見聞きした風景や事物がすべてモトネタとなっているというのが
正解なんだろうなあ。
もともと、朱日記の舞台は北国の城下町で「金沢」とはどこにも書いてないので、
具体的な場所を探す事にあまり意味はないのかもしれませんが、
ついつい探したくなるのがファン心理というものなのですよ。
特に、「朱日記」の世界を絵にする際に、どっか風景にリアリティがほしかったので、
まずは「朱日記」を思い出すきっかけとなった、あの「一本松」を見に行きました。
すると思わぬ朱日記的風景を卯辰山に見つけることができた。
その感動が「朱日記」の絵には入ってると思います。

※卯辰山の五本松(一本松?)スケッチ

※卯辰山の山王社付近から城下を望んだスケッチ


とまあ、そんなこんなで描いた朱日記の原画、
卯辰山近くの鏡花の生家跡「泉鏡花記念館」で展示中。
僕の絵を見て「朱日記」創作の未だ見ぬ新事実に思いを馳せていただくのも、
一興ではないでしょうか。


「中川学画 朱日記」展 2015.8.10から約5週間開催予定。
※全原画を週替わりで展示いたします。
金沢泉鏡花記念館






 
  • 2015.08.12 Wednesday
  • -
  • 18:51

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